数日前。
クスリをもらいに医者に行くと。
玄関ドアは開け放たれ、患者は一人もいない。
看護師の女性が二人で、その一人がせっせと消毒をしている。
どうやらそれ以外することがないらしい。
二か月前。熱が出たという患者が来たときの、あの一瞬で空気が張りつめた、その同じ待合室とは思えない。
のどかといえばのどか。
「まあ、いつも血圧低いから、測んなくてもいいよねえ」という、やはりのどかな医者に。
「いえいえ、測ってください」と頼む。
こんなに人のいない時だからこそ、安心して測ってほしい。
そういえば。
両親のところに訪問診療に来る先生も、太った。
そしてやはり、どことなくのどかである。
こんな時に、病院なんか行けないよ。
みんなそう思ってた。
それが、こうしてどこの病院をもヒマにした。
のどかとかヒマとか、そういう範囲ではなく、経営危機に陥ってるという所も多いらしい。
そうかもしれんなあ。
皆さん、なるべく病院には行かないようにしましょうと、医療保険危機を訴えていたのは、いつだったろう。
コロナ一つで、世間の様相はこれだけ変わってしまった。
そして。
いよいよ緊急事態宣言が解除。
昨日あたりは、マスクをしていない人が増えた。
マスク、それってなんだよ風な短パンの若者が、スーパーの店先で持参したペットボトルに水を入れてる。
(この店では、こういうサービスがあるのだ)
人の一番行き交う場所なので、しばらく離れて様子をみてから外に出る。
マスク無しでふうふう走っている人もいる。
こんなに湿度が高くて暑くちゃ、マスクなんかしてらんないよ、と思う気持ちはわかる。
コロナじゃなくマスクで倒れる感じもする。
しかし。ううむ。
(そんなら走るなよ)
日本の夏にマスク。
さながら人体実験のようだ。
「日本モデル」の成功、とアベさんはいう。
みんなで、ただひたすら我慢したことがそれなら、胸を張るのは私たちだ。
でも、まだまだ終わってない。
人前で唄うという仕事が、唄う場所を提供する仕事が、これからどうなるのか、まったくわからない。
つぶれた店も多くなったし、あ、あの人もつぶれたと言われないようがんばらなきゃ。
すべて。まだまだこれからです。