もしかしてと、自身を隔離していたメルケルさんが戻ってきて。

そして国民に向けて言葉を発した。

 

その言葉たちを読んだ。

 

「どうぞ政府を頼ってください」

 

ううっ。目頭が熱くなる。

 

頼ってください。

この言葉を、誰かに言われることなんてなかった。

 

頼れない。だれにも頼れない。

そう思って、背中に鉄板みたいなカタいもんを入れる気持ちで過ごしてきたんだ。

 

自分で自分を守る。親を守る。

そんなふうに、ガシガシして緊張して、生きているんだ。

 

 

 

なのに。

頼ってください。どうぞ頼ってください。

 

ふうううと気が抜けて、自分の国じゃあないのに、自分たちのことじゃあないのに、涙がでてしまった。

 

 

こんなふうに言われたらどんなに気持ちが楽になるだろう。

 

 

「先は見えません。いつ終わるかということは軽々に言えません。いついつといってしまえば、それができなかったとき、皆さんをとてもがっかりさせてしまうからです。でも私たちは皆さんを守ります」

 

 

目に光を宿したメルケルさんは、穏やかな表情で微笑んでいる。

 

 

メルケルさん、同い年なんだなあ。

ベルリンの壁を越えて波乱の時代を、懸命に生きてきた人なんだなあ。

人が人であること、人の尊厳をずっと政治の核にしてきた人なんだなあ。

 

 

「どうぞ頼ってください。」

言われたい、言われたい。

私たちも、言われたい。

 

そして言いたい。

はい、あなたなら頼れます。

 

 

 

でもねえ。

でもねえ。

 

信頼って、これまで、その人がやってきたことの上に成り立つわけで。

 

ううううん。

うううううん。

 

 

あかんわ。