もうずいぶん歌、唄ってないなあ。
そう思いながら、スタジオに行く。
レコーディングスタジオも、閑散としている。
入り口に消毒液が置かれ、えええっと驚いてたのは二か月ほど前。
もう昨日は、ロビーの椅子が封鎖されていた。
つまり、四人掛けの椅子の斜め二つに緑のシールが張ってあって座れないようになっている状態。
斜めに二人まででないと、密着ですってことだけど、誰もいない。
みんなマスクをしている。
以前から決まっていたデュエットを録音する。
誰もかれもみんなマスクをしている。
なので、誰が誰かわからない。
顔半分マスクなので、かなり親しい人以外、判別しにくくなっている。
夜、緊急事態宣言でるんだね。
と、言い合いながらそそくさと別れる。
お茶してこう、なんてことはもうできない。
そして、その宣言。
これまでに比べると、格段に熱量のあがった会見。
いよいよ背水の陣だなあと、緊張する。
ただ。
皆さん、仕事を家でやってください。
という要請は、ムズカシイ。
みんながみんな、テレワークなんかできない。
その証拠に、出勤時間の駅はどこも混んでる。
そして、もう全滅だけど、私たちのような仕事は、もうどうにもならない。
お店をやっている人もどうにもならない。
こんなにどうにもならないけど、給付の話はよくわからなかった。
理解しようとしたけど、結局わからなかった、
その仕組みがわからなかった。
テレビの前にいるうち、だんだんカラダが重たくなって、ずるずる寝そべった。
カラダが疲れてるはずもないのに、どうしようもなく重たい。
上からおっきな荷物を気づかれないように、乗せられているよう。
この重さと、きっとみんな闘ってる。
これまでも、そしてこれからもっと。
カーテンを閉めようとしたら、おっきな赤いお月さまが見えた。
ああ、みんなこの同じ月を見てたんだな。
世界中の人が、大昔から今まで。
鼻がつーんとした。