長い髪が流れる背中が美しい。

客席から出てこられた瞬間から、良い香りが会場を満たす。

 

川井郁子さん。

言わずと知れた美しいバイオリニスト。

馥郁(ふくいく)とした香り、というまさにその通りのお名前だなあ。

 

 

青山のブルーノートはいっぱいのお客さま。

遅い時間のほうのライブなのに、週末のゆったりした極上の時間が流れている。

 

川井さんとお会いするのは、まったく久しぶり。

もうずいぶん前、地方でのイベントコンサートだったろう、そこであろうことか司会もしていた私。

その出演者のお一人が川井さんだった。

 

刀がバイオリンに替わっただけで、まるで真剣勝負のような眼差しの強さに、驚いた。

そうか、バイオリンだって格闘技かもしれん、と思った。

 

 

 

昨日の川井さんは、変わらぬ強さと美しさで、一気に90分。

総勢12名のメンバーと、ライブを駆け抜けていく。

オリジナルに加え、タンゴ、シャンソンも。

 

 

「3月に三島由紀夫をもとにしたコンサートをします。そこではシャンソンの歌姫(といってくださった)クミコさんも出演されます」

川井さんが丁寧な告知をされる。

 

そうなのだった。

ご一緒できるのだった。

 

 

舞台上の川井さんを見ていて、ふとどなたかに似ているなあと思った。

藤あや子さんだった。

 

パフォーマンスをしているとき、ただならぬ引力をもつ女神、ミューズ。

なるほどなあ、と納得する。

 

 

で。ここで余談。

これもずいぶん前。

福岡空港で、私、藤さんにまちがわれてサインをねだられたことあります。

すっぴんでメガネかけてて、どこでどうしたらそうなるのか、まったくわからんのですが、ちょうど演歌のイベントもあって、ほぼ同時刻にそのあたりにいるということだったのでしょう。

おおきな荷物とスタッフたちとという、その有り様がにていたのでしょう。

「ごめんなさい。私藤さんじゃあないんです」

 

これって、私的にはどうしたって自慢話だけど、やはりなんだか申し訳ない感じがする。失礼な感じがする。

 

 

 

 

だからといって。

川井さんと私は、まったく間違われる余地なし。

 

花に花を添えるような歌が唄えれば良いと思っています。

はい。