固定電話が鳴った。
いつのもように留守電にしていた。
きっとまた銀行かなんかのお知らせだろう。
そう思って出かける支度をしていると。
「ああ、私Kですが」
と弱々しい女性の声がする。
あれ。
「予約をしておりましたが、ちょっと風邪をひいてしまいまして」
という声に、あわてて受話器を取る。
「おかけになった番号と違うようです」
「え?お医者さんじゃない?」
「はい、病院ではないんです」(医者なら良かった、私)
その声の弱々しさが、他人事ではない。
この時期、朝や夜の固定電話はコワい。
びくっとする。
表示される電話番号が、両親の家のものではないと確認すると、胸を撫でおろす。
このびくっびくっは、年毎に増えていく。
特に冬場、翌日代わりのきかない仕事を抱えていると、今晩そんなことが起こりませんようにと、誰に祈るわけでもなく祈る。
昨晩もそんなふうに床についた。
なにごともなく朝が来ますように。
幸い、私にはなにごともない朝がきたけど、このKさんにはそうでなかった。
早く好くなるといいですね。
見知らぬ人を思う。
で。
これから、今年の歌い初め。
調布でのコンサートに向かいます。