今年秋のビルボードライブでご一緒したジャズピアニストの桑原あいさん。

彼女のプレイがもう一度見たくて、紀尾井ホールに行く。

 

私が愛称みたいに「ヤンキー」と呼ぶあいさんが、弦楽器のアレンジをするという。

いったい、どんなものか。

 

 

レミオロメンというバンドをされていた藤巻さんのコンサートで、彼女がアレンジとピアノ。

 

青春そのものみたいな純な歌たちに、あいさんのアレンジは、多彩な色をつけていく。

 

すごいな。

すごい才能だな。

 

 

あいさんのすごいのは、実は音のない所にあるような気がしている。

激しいビート感のあるところは、もちろん素晴らしいけど、音と音のスキマや、音が消えていくところ。

そこに、気持ちがぐぐぐと入り込む。

入り込める空白を残している。

 

獲物を追うチータが、獲物をとったあと静かにその場でたたずむような。

息を弾ませた生き物が、そのあと放心したように生き物であることそのものを哀しむというか。

 

 

そんな湿度を感じる。

 

やはりあいちゃんは、傑物だった。

 

 

これでまだ20代なのだ。

 

 

すぐに消えそうになる私の歌心の灯に、少し明るさが戻った。

消えちゃいかん、消しちゃいかんと思いつつ、時にどうでもいいやと思ってしまう、この歌心の灯。

 

一度吹き消したら、もう二度とつかないだろう灯を、来年にもちゃんんと守りたいなあと思った。

 

いろんな人の力を借りながら、守りたいなあと思った。