住宅街の角を自転車で曲がろうとしたら、親子連れと接触しそうになった。

ちょうど幼稚園の帰宅時間だったらしい。

とはいえ、まだ午前中。油断していた。

 

ちょっとヨレながらハンドルを切り直すと、そこにスーパーの買い物袋を持ったオジサンが。

 

親子連れにも、その男性にも、幸いぶつかることなく体勢を整える。

 

 

と。

「そんなとこに、ぼおっと突っ立ってるからだよ!」

背中に怒声。

一瞬、私に向かって言われたのかとギクッとして振り返ると。

さっきの買い物オジサンが、幼稚園の守衛さんに怒鳴っている。

 

守衛さんの仕事は、門の外で、親子を迎えたり送ったりすること。

雨の日も風の日も、道路上に制服を着て立っている。

 

この守衛さんは、代々、定年後の人の良さそうな男性が勤めている。

私のような部外者も、時々会釈し合う。

 

 

まあ、そんな地域に根差した関係だ。

 

そう思ってた。

 

ところが、買い物オジサンにとっては、そうではなかったようだ。

 

親子連れにも、守衛さんにも、そしてこの幼稚園そのものにも、彼はふだんから欝々とした感情を持っていたに違いない。

 

わが家の近くで子供の声がするのがいやだ。と、保育園が建てられない話はよく聞く。

たいてい、年輩者からの反対だという。

 

ゆったり暮らしてるのに、子供の声に邪魔されたくないということなんだろう。

なんか殺伐とした話だなあと思ってはいたが、実際、こんなふうな罵声を聞くと、背中が冷える。

 

 

冬の陽だまりの中を、みんなが行き交う。行き交える。

子供も大人も年寄りも。みんなが行き交える。

そのことの幸せを、幸せと感じられない人だってきっといる。たくさんいる。

 

そういうことなんだろうなあ。

 

 

次の角で、また振り返ると、買い物オジサンは、まだ守衛さんになにやら怒鳴っている。

スーパーのポリ袋が冬の日差しを反射してる。

 

あったかいねえ今日は。

そうですねえ。

 

そんな会話であればいいのに、と思った。