一日息を潜め。

起きたら青空だった。

 

でも。

テレビをつけたら千曲川の氾濫の映像。

いかにも穏やかな名前の千曲川も氾濫する。

 

水の中にある家や車、そして新幹線も。

いったいどうなっちゃうんだろう、この国、いや地球。

 

温暖化のことと、そして7割は山というこの国のこと。

 

 

いまからまたしても30年ほど前。

(思い出がみんなこのくらいの年数になってる)

 

森林の手伝いに誘われた。

この国の山はタイヘンなことになっていて、下草をきちんととらないと山林はその役目を果たせないのだという。

 

戦後、たくさん植えられた樹々は、もともとそこにあるものではなく、手っ取り早く復興を担える木材にするための木。

それが間を狭く植えられ、その後、外国産の安い木に取って代わられ、山主ももう手入れなどできない。

だから、どんどん伸び放題の木の下には、陽がささず、下草は育たず、それが地盤をゆるくしていく。

保水力のない山にしていく。

 

そのために、若い力が必要で、クミコさん、今度の休みに一緒に山に行きませんか。

 

というお誘いだった。

 

 

ううむ。

うなった。

 

世のため人のため。

まだ若かった私は考えた。

 

でもお断りした。

 

「すごおおくタイヘンな作業なんですよ」という説明に怖気づいたこともある。

汗なんかもう汗じゃないほど流れ落ちる。

ひええ。

それよりも集合時間が早朝だった。

ひええ。

これで申し訳ないけどお断りした。

 

 

一昨年。

熊野のロケで。

なにより心に残ったのが、案内人の方の言葉だった。

 

「この樹々は、もともと熊野に生えてたもんじゃないんですよ。」

と、ひょんひょん伸びる樹々を指して、苦々しそうな言葉。

山林の問題は、熊野にもあったのだった。

なに一つ良い方向に向かってはいなかった。

 

こうして、何十年も日本の山は放置されてしまった。

山が保水力を持たないことで、山崩れが起きる。

山が壊れる。

 

保水力のない山から雨は、下へ下へと下る。

それ以外、水の行きようはない。

 

山から海まで。

途中、限界を超えた水は、溢れる。

 

溢れて、家や車や人を浸す。

 

山だらけなんだもんなあ。

地図を見るとため息が出る。

 

 

こんなに山だらけで、平地にへばりつくように、みんなで生き合ってるんだもんなあ。

海に囲まれ、山と川とともに生きる。

 

これじゃあ、今のままじゃあいかんだろうなあ。

ぜったいいかんだろうなあ。

 

 

水の~流れに~ 花びらを~

「千曲川」の歌が美しい。