先だって。
樹木希林さんが亡くなったあと公開された「日日是好日」という映画を見た。
黒木華さんが主演で、樹木さんはお茶の先生という役どころ。
きゃぴっとした女子大生が、ひょんなことからお茶の習い事をはじめ、40年間。
彼女の人生とお茶の所作が重なっていく。
いつしか手が勝手に動くようになるのよ。と樹木さんの先生が言う。
そうしてこそ、心が自由になるのだと言外に言っている。
そんなことを昨日、大阪公演で思い出した。
音と言葉で唄う。
心を添わせながら、私自身を唄う。
この道は、一見華やかにも見えるけど、全然そうじゃないなあ。と思う。
ただひたすら迷いながらも光を見つけ、精進するしかない。
まるでお茶の道と同じように、寡黙に淡々としているものかもしれない。
敵は向うじゃなく、自身であることもわかってくる。
映画の中、才能豊かな若い人を見て、主人公が絶望におちいるシーンがある。
私ってなんでこうなの。
それでも、日々は過ぎる。
そんなあれこれ、人生の浮き沈みの中で、お茶は彼女のそばにある。
お茶を通して、それを鏡にして、主人公は生きていく。
そうだなあ、歌は私にとってそういうもんかもしれないなあ。
どんな形でも、ずっと歌を伴走者のように生きられればいいなあ。
と思った。
また来てくださいね。
サイン会でお声をかけていただく。
ありがたい。うれしい。
あ。一つうれしいことが。
ドラムスの足立さんにお子さんが。
四カ月まえに生まれた女の子ちゃん。
もう正直あきらめていたというアダッチー夫妻。
こうして、この世にまた新しい命。
一つの物語が始まる。
こうして、うれしい日も哀しい日も、それは好日。
どんな日も好日。
それが「日日是好日」。
ううむ。
深い。