昨年は出席できなかった「シャンソンコンクール」の審査員。
これで三回目になる。
30余名の方々が、プロアマ問わず参加する、銀巴里の先輩、深江さんが企画して行われているコンクール。
会場の内幸町ホールに入るなり、ピアノのアキオちゃんが泣いて飛んできた。
私のコンサートに初めて参加した最年少のアキオちゃんを、谷さんは、お兄ちゃんのように励まし、そして優しかった。
アキオちゃんは、初めて喪服を買ったという。
そして、その黒い服で、出番が終わるとあわててお通夜に向かった。
「谷さんに会ってきます!」
大貫さんにもよろしくね。谷さんにもね。
私はそう声掛けして、最後の審査結果発表と表彰へ向かう。
同じ審査員仲間も、気持ちが湘南の藤沢に飛んでいる。
藤沢鵠沼海岸で眠っている谷さんを思っている。
ちょうど昼間。出がけに。
笹森マミーから電話があった。
ロスから日本に来ていること、明日広島に行くこと。
原爆をカラダ中に受け、何十回も手術をしたマミーは、もう90近いのに、声が凛と元気だ。
「クミちゃん、神さまはね、ちゃんといつだって見ておられるのよ」
宗教っていうんじゃないの、神さまは、どこにもおられるのよ。
だから、どんなことも受け止め生きていきましょうね。
とマミーは言うのだ。
そうだ、どんなことも、人の力ではどうにもならない。
生死のことは、どうにもならないのだろうなあ。
でもさ、でもさ。
と、心がわさわさする。
やっぱりわさわさする。
神さま、私はまだまだ未熟です。