毎度、おなじみ。
近所の猫村さんだか猫川さんだか猫山さんだか猫谷さんだかの家に生まれた子猫。
親猫だか叔母猫だか兄弟猫だかわからない総勢10匹くらい。
それらが、のらくらぬらくらと、寝そべったり、じゃれたり。
道行く人は、立ち止まり、そうすると、その立ち止まった人にそそそと寄ってくる。
これだけいろんな人が通る遊歩道なのに、まったくイヤなことがなかったのだろう。
この家の猫たちは、人を恐れない。
人馴れしている。
子猫の中にひときわちっちゃくって目がちゃんと開いていない、どうも両目のつきかたが間違っちゃたなあ、な感じの子猫がいる。
チビクロ。
私は彼だか彼女だかを、そう呼んでいる。
ずっとこの家にいた、元野良猫らしいクロちゃんがいなくなって、それからこのチビクロが生まれた。
クロちゃんは、人格猫だった。
猫にも犬にも人にも、時々そういう素晴らしい性格を持ったものがいる。
(ちなみに、私の子供の頃、私を愛してくれた雑種のコロもまさに)
で。
クロちゃんの次にこの世にやってきたチビクロは、生きてるのがやっとみたいなのだ。
ひときわ小さい。ひときわ弱い。
先だっては、ちょんと座って下を向いていた。
風が吹いたら飛ばされそうなちっちゃな黒い毛玉。
その形以外、できないように、ただオレンジ色の舗道を見ている。
チビクロちゃん、と呼ぶと、ちょっと動いた。
黒くてよくわかりにくいけど、片目だけうっすら開いていて、そのめちゃくちゃにちっちゃい生き物が、ふうふうとカラダの奥で生きる力を蓄えているような感じがした。
ふうふうふうふう。
がんばれ、チビクロ。
通るたび、声をかける。
見えないと心配になる。
先だって。
この猫村さんだか猫川さんだかのご主人がいたので、聞いてみた。
「あのクロちゃんはどうしたんですか」
「ああ。クロちゃんは春に死にました」
その時、その人の目がちょっとうるんだ。
そうか。やっぱり。
チビクロちゃんは、クロちゃんの生まれかわりかもしれんなあ。
がんばれ、生きろ。生き抜け。
チビクロちゃん。