レコード会社コロムビアは、虎の門に近い。
このあたりは、大きな再開発の真っただ中で、どんどん超高層ビルが建っている。
目の前にあった、日本式情緒と格式のあったホテルオークラも壊され、昨日タクシーから降り立った時、そこがいったいなんだったか一瞬わからなかった。
「オークラって、こうなっちゃったんだあ」
「そうなんですよ、驚きました」とみんなが言う。
コロムビアのビルの応接室から見ると、まったくビジネスビルみたいな新オークラの向こうに、昔のままのオークラが見える。
そのあまりの違いに、愕然とする。
なんだか寂しいなあ。
全面ガラス張りの窓に、鳥がぶつかりゃしないか。
と、黒っぽいぴかぴかビルを見上げる。
こうして、どんどん空は小さく狭くなる。
「ここを、日本のシャンゼリゼ通りにしようってことらしいですよ」
と言う虎の門ヒルズ前の通り。
だけど、凱旋門がないのに、シャンゼリゼ通りってどうするのかなあ。
凱旋門のかわりに、大鳥居でもあるならいいけど。
来年のオリンピックを控え、東京は作りかえられている。
令和は、希望まっしぐらの道を進んでいる。
ああ、なんだかついていけないよお。
令和じゃなくて昭和の名残りを、残された街角に見ると、鼻をクンクンする。
昭和の匂いを満喫する。
それにしても。
コロムビアのマスコットキャラクター、コロちゃんは、まったくもって昭和の顔だ。
服装も、男の子だか女の子だかわからない、Aライン。
あったあった、60年代あったよな感じ。
このビルも、老朽化で、違う場所に引っ越すらしい。
ああ、寂しいなあ。
私は、どこまでも昭和のニンゲンなんだなあ。