まもなく新元号発表だが。

今はまだ、寒さの名残りにぶるぶるしている。

 

こんな時に、腹巻は欠かせない。

 

この一枚で、とたんにお腹が落ち着く。

 

今は赤と黒のチェックの短めのものを着けている。

たしか、どなたかにいただいたものだ。

 

 

寝るときにももちろん腹巻は必需品。

できれば、長ーく伸びるものがいい。

どこにもストレスがなく、ゆるゆる、でもきちんとお腹全体をつつんでくれるもの。

 

それがなかなか、ない。

 

近くのスーパーでシルク入りと書かれたものは、はたしてどこがシルクなのかわからず、それよりなにより、上下のゴムが気になった。

 

腹巻にゴムの締めつけは厳禁だ。

 

 

仕方がないのでネットで探した。

そこにある写真で、女性の胃から下腹まで、どぼぼんと包んでいる腹巻に、おおこれだ、と二枚注文。

口コミ情報も、なかなか良さそう。

 

 

で。届いた腹巻。

やはり、理想とはどうも違う。

布地が厚い。

やはり締めつけ感がある。

 

 

それまで着けていたものは、父親がくれたものだ。

生成り色の、何の変哲もない、いわゆるオッサンの腹巻。

 

買った日付をなんにでも書くクセのある父親が、隅にマジックで書き込んだ字は、とうに見えなくなった。

影も形もなくなった。

 

 

父親とおそろいの、この腹巻は、長い年月にどろろんと弾力を失い、腹巻としての役目ができなくなってきた。

 

で。

新しい腹巻がきても、まだそれを捨てることができない。

くたくたになった木綿の腹巻を、たいていのように、さっさと捨てることができない。

 

 

どろろんくたくたの腹巻は、それ以上良いものがないように思えてくるから不思議だ。

 

せめて、洗濯してから捨てるか取っておくかしようと洗濯籠に入っているのだけど、そのまま。

 

 

 

父親が霊園のパンフレットを取り寄せたという。

夕刊にあった樹木葬の広告に、自身で電話をかけ住所を伝えたらしい。

今の父親に、そんなことができたことに驚いた。

父親を突き動かしたものに驚いた。

ちょっと悲しい気がした。

 

 

でもさあ、そこ、ものすごく遠いよ。

都内にも近くでいろいろあるから大丈夫だよ。

と、また私の「ダイジョウブ」の出番。

 

そうかあ、そうだなあ。

と納得するものの、ものの五分でまた同じことを繰り返す。

 

ダイジョウブだからね、ダイジョウブ。

 

 

 

父親の腹巻もそろそろくたくたになってきた。

 

腹巻に年月を思う、桜の朝。