つい最近開店したお蕎麦屋さん。

カウンターだけの小さな店だけど、なかなかにいい感じの店。

 

そこが閉まっている。

ここずっと閉まっている。

 

なにか貼り紙がしてある。

 

「人手不足のため、しばらく休業します」

そのあとに、連絡先の電話番号。

 

 

そうか、人手不足の波はこんなとこにも来てるのか。

 

 

夜、ポピュラーなイタリアレストランに行くと。

 

金髪を束ねた外国人の女の子が働いている。

ここは、ファミレスのような店で、日本の学生さんがアルバイトしてる感じのとこだった。

 

 

やっぱり、人手不足なんだなあ。

 

 

こうして、いろんな国の人に働いてもらわないと、どうにもならない。

 

 

 

昔。

ピアノを弾いていた店に、中国の青年が働きに来ていた。

 

日本語もそこそこだったけど、細かいことはうまく伝わらない。

それでも、洗い場や調理場で、コックさんたちの下働きを一生懸命していた。

 

 

その頃は、外国人の人とお話する機会もなかったので。

「中国のどこから来たの?」

と聞くと。

 

「カンツィン」

 

え?カンツィン?

 

さっぱりわからない。

 

すると、彼は漢字を宙に書いた。

 

 

「天津」

 

ああ、テンシンかあ。

そこなら有名だねえ。

でも、テンシンていうんじゃないんだね。

 

本当の発音がどういうものかはわからないけど、天津はカンツィンに聞こえた。

 

そうかこれが国際化だなあ。

 

なんだか、初めて他国の人と出会ってヤリトリするような、いわゆる「はじめて物語」にいるような気がした。

 

 

そのあと、彼はすぐやめてしまった。

もっともっと聞きたいことはあったけど、いなくなってしまった。

 

 

 

「時給1000円になるらしいね」

と一緒にご飯を食べている友人が言う。

それが政府が決めた労働基準らしい。

 

1000円かあ。いいなあ。

 

450円くらいで働いていた日々を思う。

雇ってくれないかなあ。なんて思う。

 

それはもう無理だろうなあ。とまた思う。