「小原会」と名付けた飲み会がある。
今は総勢6名で、時たま早い夕方、居酒屋に集合する。
なぜ、小原会なのかというと。
朝から酒を飲んで身上(しんしょう)を潰した小原庄助さん、この庄助さんを思い出したからだ。
なのでユルイ。
声高な議論もないし、ツマラナイことで大笑いし、酒を飲む。
それでも、集まるからには、一応の名目がある。
暑気払いとか忘年会とか、そして今回のように快気祝いとか。
このごろ、この「快気祝い」が増えてきた気がする。
それだけ、病気やケガが多くなったということだ。
「鍵盤断裂」という肩のケガで、入院手術した黒一点のTさんは、今でも右手が上がらない。
痛くて痛くて眠れない日々も続き、リハビリを重ねている。
ほら、肩に六個穴開けて、そこから腱をつないだんだよ。
ともろ肌を見せるが、ぜんぜんわからない。
虫に食われたような赤味がぽちっとあるだけだ。
すごいねえ、今の医療は。
と感心し、左手で箸を持つTさんに、左手使うとアタマが活性化してボケないよ、なんて訳のわかんない声がけをする。
要するに、もう訳がわからない。
そういうユルイ中高年になっている。
そうかとおもうと。
「ねえねえ見て見て。こんなの来たよ」
と、一枚のハガキを見せるニンゲンもいる。
見ると、差し押さえの督促状のようなもの。
法務省から来たという、不愛想なハガキには2月25日が期限と書かれている。
「これ来たの24日だよ」
こうして、届いた人をあわてさせ、そこに書かれた電話番号にダイアルさせようという魂胆だ。
つまり今はやりの「詐欺」。
こんなの、年寄りなんか絶対電話しちゃうよ。
やばい、やばい。
と、自分たちよりもっと年寄りのことを心配する。
たしかに、まったく、ヒドイ世の中になっている。
うまく死ぬのも、並大抵のことではない。
そうそう、イチローも引退しちゃったね。
と、一番ホットな話題になる。
イチローってさあ、昔プラピみたいだった時期あるよ。
と、これは私の発言。
そりゃあもうカッコよくて惚れ惚れした。
でも、だんだん修行僧のようになって、ついに引退。
スゴイよねえイチローとほめたたえ。
でもさあ、あたし、イチローの奥さんにはなりたくないなあ。
の意見に。(実はこれも私)
あたしも、あたしも。
とおばちゃんたちが同調する。
イチローが私たちを奥さんにしてくれるはずもない。図々しいにもほどがある。
つまりのところ。
こんなユルイ私たちは、禁欲的でリッパな人が苦手である、とまあそういうことらしい。
なんかわかりやすいなあ。
ふと。
温泉に入って虚ろな目をしている動物園のカピバラを思い出した。
ううむ。
なんともはや。