安藤サクラさんを毎日見ていると、いつも感心する。
本当にココロの入った、でも、きちんとした技術のある芝居をしている。
若い頃から、今は中年。
主人公の、そのあたりのちょっとした仕草の変化にも、まったくわざとらしさがない。
これはなかなかできないことだろう。
髪に白いものを混ぜたり、声音を下げたり、とかそんなことではわざとらしい。
サクラさんを見ていると、笑い方一つ、動作一つが、その歳相応に自然に見える。
これはなかなかできることではない。
げんに、他の役者さんたちには、無理が見えている。
自然に自然に。
自然が一番むずかしい。
サクラさんがすごいのは、そこに「愛」が見えることだ。
子供たちに伸ばした手や、夫や母親への、ちょっとした仕草や目線に「愛」が見えることだ。
うまい役者さんはいるけど、愛の見える役者さんは少ない。
愛を見せてしまうほど巧みなのか、あるいは、本当に愛に溢れた人なのだろう。
ずいぶん前に、サクラさんのお母さま、安藤和津さんとご一緒したことがあって。
帰り際にご本をいただいた。
和津さんの母上、サクラさんのおばあさまの壮絶な介護のことが書かれた本だった。
脳に腫瘍ができて人格が変わってしまったおばあさまを、家族中で介護する、その地獄のような時間。
サクラさんは、まだ少女だったころから、こうして人の生き死にの様々を身をもって経験したのだろう。
ニンゲンっていうのものの不可解さや理不尽さや、そんないろんなことに身を置きながら育ってきたのだろう。
なあるほどねえ。
と、こうして今、私はサクラさんを見ながら、感心している。
過酷な日々を、大きな「愛」という樹に結実したサクラさんに感動している。
サクラさんは、これからどんな役者さんになっていくんだろう。
サクラという愛の樹が、どんなふうに大きく育っていくんだろう。
楽しみなことだなあ。