一人の作詞家だけで、9時間近くの特集ができる。
これは、やっぱりものすごいことだなあと思った。
NHKFMの「今日は一日 松本隆三昧」
この番組の終わりごろ。
6時過ぎにスタジオに入った。
司会が昨年の大晦日でお世話になった上柳さん(まるでニッポン放送のような)と、NHKの女性アナ中條さん。
色々な方々がゲストに来られていて、鈴木茂さん、中川翔子さん、吉田照美さん(まるで文化放送のような)。
そうして、ご本人。松本さん。
遠慮がちにしずしず中に入っていくと。
おお、とも、ああとも、その中間のような声で松本さんが向かい入れてくれる。
大きなスタジオに松本さんの曲が流れ続ける。
SNSでは、多くの投稿が寄せられ、一人一人の人生に、松本さんの言葉がこんなに関わってきたのだなあと、その事実に、今さらながら驚く。
流行歌というのものは、たいてい、その歌を唄う歌い手ばかり見ていて、それを作った人のことに思い至るなんて、なかなかなかった。
でも、あんまりココロを揺られる歌があると、これって誰と思って、そのうち、あ、これも、あこれもとなる。
だから、それだけたくさんのココロ揺らす歌を作らねばならない。
それって、やっぱりものすごいことだ。
隣りに座ったしょこたんは、「フローズンダイキリ」が流れると、すぐにスマホで歌詞検索をはじめた。
いい歌詞ですねえ。
そうなんです。
「自分を愛し過ぎず、憎み過ぎず」なんてすごくいい言葉でしょう。
と、まるで自分が松本さんになったように答えてしまう。
休憩をはさんで、後半は私だけ残り、三人のスタジオ。
え、これってどうなの。
と焦るけど、どうにもならない。
松本隆研究家でも、松本隆信者でもない、ふらふらと、ただことあるごとに関わっていただいているだけの私ごときが、いったいどうしたらいいんだ。
でも、そこはさすがの上柳さん。
そこらあたりを重々承知の上で、丁寧に番組を作っていく。
歌い手にまつわるエピソードであったり、時代であったり。
それは、やっぱり昭和を生きた人の実感でもあって。
歌と共にあったあの日たちへの尽きない想い。
それを彩ってくれた松本さんの作品への想い。
言葉とメロディー。そして歌い手。
この三つが、奇跡にも似た出会いをすると、名曲、ヒット曲になる。
そのどれ一つもなくてはならない。
だからこそ奇跡。
その奇跡をこれだけたくさん作った松本さんは、やっぱりすごい。
やっぱりすごいなあ。
これに尽きました。