二つお隣の部屋が改装工事を始めた。
改装というには、工事日数が長く、全面的なものらしい。
一日目は、解体から始まるので、その音がすさまじい。
何も考えられなくなる。
耳栓をしてみたけど、まったく効果はない。
外廊下に出ると、あのなんていうんだろう、下がふくれている作業ズボンをはいた男性とばったり。
「こんにちは」
きちんと挨拶してくれる。
気持ちがいい。
この頃では、こういった作業に外国の人も混じっていることが増えた。
現場監督以外、全員外国の人というのもよく見かける。
腕っぷしの強そうな、その人たちは、たいてい浅黒い彫りの深い顔をしている。
日本でお金を稼いで、故郷に送る。
そんな構造が見えてきて、故郷で待つその人たちの家族や風景を想像してしまう。
この国とは生えている木も、土も、空気も違うだろう。
そこからこの国にやってきて、重労働をする。
休憩時間なんかで道端や車の中で、でれりと休んでいる人たちと出くわすと、やっぱり挨拶をする。
こんにちは。
コンニチワ。
挨拶は握手と似ている。
敵意がないこと、仲良くしようとしていることを示せる。
それはお互いが同じ。
とても便利だし、なによりうれしい。
ちょっと微笑んだら、なおうれしい。
昨日もまた。
これから雪かもしれないという寒い夕暮に、マンション玄関スロープを掃除している青年と会った。
きっと一番シタッパの若い子なんだろう。
きちんと水を流し、ごしごしと溝あたりをさらっている。
少しの工事の痕跡も残さないよう掃いている。
こんにちは。ご苦労さま。
あ、どうも。こんにちは。
にっこり言ったつもりだったが、私、マスクしていた。
はずして挨拶すればよかった、と、どうでもいいようなことを後悔した。
でも。
やっぱり挨拶は気持ちいい。
寒くてもちょっとあったかくなる。