カラオケで唄うのは、ある程度予想がつく。
どこでどうなっても、どんな心持ちでも、ある程度の予想がつく。
でも。
生楽器とのコラボレーションは、そうはいかない。
人がやっていることなので、予測不能だ。
昨夜。
ハーモニカの山下伶さんとピアノとチェロの林姉妹。
この若く美しい三人との「風のささやき」は、まさしくそうだった。
それぞれの音が織りなしていく間に、私の声が入る。
言葉が入る。
それこそ、春の風のように、夏の風、秋の風、冬の風のように。
四人の風が吹く。
リハーサルでは、これだという着地点が見つからない。
でも、それでいいのだと思った。
きっと本番には、その時だけの風が吹く。
ミュージシャンはみなそうだ。
お客さまを前にすると、それまで思ってもいないことを思ったり、そしてそれが音になったり。
一期一会の歌が、こうして出来上がる。
チェロの音が伸びて、それこそ、風の間に消えていくように終わったとき、音楽の幸せを思った。
忘れられない いくつかの言葉
忘れられない いくつかの名前
忘れられない いくつかの顔が
漂いながら やがて消えてゆく
この高野圭吾さんの歌詞が、胸に迫る。
これまで関わった人たち。
そして今、関わっている人たち。
その方たちに、どれだけ助けてもらって生きてこられたのだろう。
恩を返そうとしても、もう返せない。
いや、これから返せるかもしれない。
そんないろんな思いが去来する。
人が生きる時間は、ほんとうに一瞬の風のようだ。
苦しみ、悩み、喜び、悲しみ。
すべては、一瞬の風のようなものなのだろう。
だから、愛おしい。
とても、とても、愛おしい。