師走の新宿に行く。

 

そこで、初めてお会いするかたと食事。

 

その方は、今年初め、奥さまを失くされている。

 

明るくお話されているが、ときどき、目元をぬぐわれる。

 

 

 

そういうとき、慰める言葉のないことを知る。

 

 

私は祖父母や叔父叔母を失くしているが、一緒に住んでいたわけではない。

 

だから、本当の悲しみを知らない。と思う。

 

家族を失う悲しみは、わかっていない、と思う。

 

 

 

その悲しみは、これからやってくる。

 

父と母がいなくなったら、どういう悲しみがやってくるのか、身構えている。

 

身構えていても、その時にならなければわからない。

 

 

 

時々想像してみる。

 

両親や、身近な人がいなくなることを想像してみる。

 

 

闇だなあ、と思う。

そこには、大きな闇が広がるだろうなあと思う。

 

 

 

 

昨夜、NHKドラマ「落語心中」が終わった。

 

友人の篠井英介さんが、ずっと出ていて、最後はオジイサンになって、禿げ頭のカツラで登場していた。

松田さん。という役だった。

 

 

松田さんは、いろいろな人を見送り、いつも目元をぬぐっていた。

 

 

いつも目をぬぐい、鼻をぬぐい、でも、その時々を懸命に生きている。

 

松田さんと英介さんが重なり、私も目を拭きたくなった。

 

 

 

英介さんは、お父さまを見送っている。

ダンディーで男前の方だった。

 

別れ際にいつも握手をして、それがまあ、ほんとにあったかい手だった。

 

 

 

誰かを失うというのは、このあったかい手を失うということだ。

 

 

冬には、そんなことを想像するだけで、苦しい。

 

 

 

 

師走の新宿は、夜深くなるにつれどんどん混雑していく。

 

あのバブルの頃を思い出すくらい、人の波がうねる。

 

 

人の波は、一人一人の顔を隠してしまうけど、やっぱり、一人一人には、一人一人の悲しみと、そして喜びがあるのだろうなあと思った。

 

 

 

あ。そうそう。

英介さんとは、来年1月にまた成城ホールで二人公演をします。

 

今年できなかったので、新年早々になりました。

またぜひ。