茨城の下妻。
そこで東京室内管弦楽団とのコンサート。
この楽団のかたがたとは、これまで何回かご一緒した。
クラシックを中心に、それをポピュラーな形でお客さまに届ける、そういうコンサート形式なので、私のような歌い手もお招きいただく。
共演者が若いお二人。
サラ・オレインさんと藤澤ノリマサさん。
ノリマサさん、いや、ノリちゃんとは、これまで数回ご一緒している。
彼の故郷札幌で、楽しい共演をさせてただいた。
サラさんは、体調がすぐれず、もしかしたらお休みかもと案じていたら、開演近くに来られ、素晴らしいバイオリンと歌を披露。
高熱にも負けず、いや、そのせいか、歌声が現世を超えていくように透き通る。
ノリちゃんは、変わらずエネルギッシュで、オーケストラとの相性も抜群。
こういう声で唄われたら、楽団の人もさぞや気持ちいだろうなあと思う。
私はと言えば。
以前はオーケストラバージョンが、どうも苦手だったが、機会も増えるにつれ、だんだん慣れてはきた。
それでも、やはり、今でも向いてはいないなあと思う。
声の質や発声、もしかしたら、歌そのもののとらえ方に、問題があるやもしれない。
でも、お招きいただくのはうれしい。
そうして、いろいろな方の歌声を聞けるのもうれしい。
サラさんもノリちゃんも、年代的には子供といってもいいような表現者のかたたちと、同じ空気を吸って音楽できるのは、これぞ若返り
。招福、招福。
今、すこおし、これからのことを考えはじめた。
これからのライフワークを考えはじめた。
今の歳だからできること、今の歳じゃないとできないこと。
歌と言葉をつなぐ一人舞台を夢見始めた。
ずいぶん前、大女優の長岡輝子さんの、宮沢賢治の朗読をする舞台を見てから、そのお姿が離れない。
小柄な長岡さんが、赤いドレスをひらひらと、まるで赤い雲につつまれるように登場されたときの、私たち観客のなんと幸せだったことか。
長いキャリアを経て、ご自分の故郷の言葉で読む宮沢賢治。
それは、長岡さんが、その歳を選ばれてされていたようにも思えた。
深い深い慈愛に満ちた声。
それは熟成そのものだった。
私はまだまだそこまで到達できない。
まだまだジタバタする若僧だ。
でも、少しずつ準備をしたい。
そして、いつかそのとき、長岡さんのような、ふうわりとした赤いドレスに包まれていられたらと思う。
そのとき、お客さまにも、ふうわりと幸せを感じていただけたらと思う。
夢は、こうして果てしない。
ずっと果てしない。