たまたま見始めた「透明なゆりかご」。
それが昨夜、最終回。
高校生の見習い看護士アオちゃんの眼を通して、命の誕生、命の切なさに見入ってきた。
主人公役の若い女優さんが、素晴らしくて、愛おしくて。
そして、産婦人科医の瀬戸康史さんもまた良くて。
なんだかかんだ、みんな良かったのだけど。
これなくしてはと思えたのが音楽の清水靖晃さん。
この人のサキソフォンによる無伴奏バッハが、なぜか近くの商店街ロードで、ずっと流れてたこともあったけど。
この人の音楽には、空気が入り込んでいる。
吸って吐いてという呼吸のような空気が、流れている。
こう書いていて、思い出した。
昔、マタニティーコンサートをしたことがあった。
今はなき青山円形劇場で、妊産婦を対象に、ラマーズ法の呼吸講習もまじえたコンサート。
ベテラン看護士の女性が。
呼吸です、呼吸が大切ですと、大きな元気な声で。
「すっ、すっ、はあああああ。すっ、すっ、はあああああ」
と掛け声をかける。
真ん中の舞台で、しっかりと足を踏ん張って、大きな掛け声をかける。
妊婦さん、だんなさん、そして、私たち出演者や関係者も、吸い込まれるように。
みんなが「すっ、すっ、はあああああ。すっ、すっ、はああああ」
開場はこの「呼吸」でいっぱいになった。
赤ちゃんを産むときの、この「呼吸」は、そこにいる人たちを圧倒し、納得させ、それこそ、どんな世代のどんな人たちも、大きく包んだ。
今でも、このときの「すっ、すっ、はああああ」ははっきり思い出せる。
息を吐いて吸う。
こんな当たり前のことだけど、しんどい時、ふと気づくと息が浅い。
いや、息をしていないように思える。
小刻みに吸って、すっ、すっ。
そして深く吐く。はあああああ。
深く吐けば、また吸える。
空気がカラダを循環する。
歌を歌うと、気分が良くなるのも、こういうことかもしれない。
歌う時、当然息を吐き、次のためにまた吸う。
そのうち、カラダがほぐれていく。
ココロもほぐれていく。
呼吸は、こんなに深い。