昔からオトコの趣味が変っていて。
たとえばそれは、テレンス・スタンプのようなイギリス俳優だった。
「コレクター」という名作映画を見てしまったときから、がらりとオトコ観が変わってしまった。
健全から異質へ。
この映画は、女性を蝶のように収集したいという、ヤバい主人公なのだけど、屈折具合とか、その表情とか、いかにも薄い肌と酷薄ともいえる青い眼とか、うう、好み。
ああ、テレンス、テレンスと、こうして高校時代はうなされ、もうこうなったらイギリスに行って、クミコ・スタンプになる。
なんて完全バカなことを宣言していた。
(それから何十年もたって「プリシラ」という映画で、女装して踊ってるゲイの役を見たころは、なるほどと納得した)
そのテレンス・スタンプと、ヴァネッサ・レッドグレイブが、共演する映画を昨夜観た。
BSプレミアム「アンコール!」という映画。
「時代」を担ったこの二人の名優は、すっかり、おじいちゃんとおばあちゃんになっていた。
「年金ズ」と称する合唱団に入って、最後まで社交的な妻と、かたくなな夫。
どこにでもよくある話だ。
妻は余命のなか、夫に向け、歌を唄う。
野外のお客に向け唄うのだけど、その歌は、たった一人の夫に向けられている。
自分亡き後の夫に向けるメッセージでもある。
そうして。
残された夫は、苦闘しながら、自分を開いていく。
スネて硬くなったココロを開こうとしていく。
最後、逝ってしまった妻に向け、いや、冷え切った関係の息子に向け歌を歌う。
よくあるハートウォームな設定ではあるけど。
あの美しかったテレンスとヴァネッサの老いた肉体に感動した。
老いた肉体をさらす、俳優の心に感動した。
カラダなんてさ、なんぼのもんじゃい。
若さ若さなんて、しがみついててなんの意味があるんじゃい。
肌も髪もなにもかも、変わっていくけど、それでいい。
そこでしかあらわせない素敵はたくさんある。
そう。
ステキ、素敵は、時を超える。
それにしても。
元気なお年寄りってのは、国境を越えるなあ。
映画見てて、あ、いるいるこういう人たち日本にもいるいるって。
どっちにしても先はおんなじ。
だったら元気に明るくね。
スネず、ヒガまず、にっこりね。
ううむ。
すばらしい。