今年の暑さは、早くからはじまったこともあって、尋常ではない。

 

年寄りは、もうふうふうして、限界感が出てくる。

 

そんな年寄りの父親とクリニックに行く。

 

アタマのクスリをもらうには、本人と行かねばならぬ。

 

ご本人さまがいらっしゃらないと。といわれるけど、これからそのご本人さまがなかなかいけない状況になってくる。

 

どうしたもんなんだろう。と周りの患者さんを見ながら思う。

 

 

 

 

小豆アイス食べる?

 

ぐったりした父親に言う。

 

父親ははふはふと噛むように、その小豆アイスをほおばる。

 

 

 

 

 

 

両親の家へ行く途中。

街道沿いのバス会社の駐車場、通るたび立ち止まる。

 

ほとんどの人が気づきもしない、ぽっかりとした空間。

 

 

そこには毎年初夏、ツバメがやってくる。

 

二羽の親ツバメが、4羽ほどのひなを育てる。

 

ぴいぴいいってたヒナがだんだん大きくなって、ある日その巣が「もぬけの殻」になる。

 

 

その様子をいつもスマホ写真に撮っていた。

ヒナの巣立ちを見送るまで、責任があるような気がしていた。

 

 

また今年も。と心待ちしたが。

 

今年ヒナはいなかった。

 

 

 

ある日、一羽のツバメが蛍光灯の柱に止まっていた。

 

一羽だけ、同じところに同じようにいる。

 

 

 

数日後、そのツバメの向かいの蛍光灯の柱に、なにやらの器が置かれていた。

 

籐でできたカゴのような器。

 

 

 

こうしてツバメとカゴが一対で向き合っている。

 

 

 

心優しいバス会社の人が、エサを置いたのだろうか。

 

毎年やってくるツバメ一家が、今年は来なくて、たった一羽でやってきたそのツバメに施しをしたのだろうか。

 

 

 

駐車場の奥の、胸の白いツバメと茶色のカゴと。

 

それを立ち止まってじっと見ている私と。

 

 

 

昨日。

もうツバメはいなかった。

 

 

カゴだけが高い柱の上に残った。

 

 

目と耳の奥がじいんとした。