僕の出番も多いようです、見てください。

 

 

「薔薇族」という、日本で最初の本格的ゲイ雑誌を作った伊藤文學さんから、ハガキが来た。

 

文學さんは、86才になるというのに、変わらず綺麗なシャツを着て、ひょうひょうと暮らしていた。

世で言う「没落」みたいな人生を送ってきたのに、そんなことまったくこの人には関係なさそうだ。

 

根っから上品な人なのだと思う。

ニンゲンが上等で上品なのだと思う。

 

 

NHKのEテレで昨夜一時間放送された「Love1948 2018」

同性愛の特集番組だ。

 

 

もう一人のキーパーソンが映った。

 

タックさん。

あれ、この名前どっかできいたことあるぞ。

誰だっけ、誰だっけ。

 

 

次のシーンでバーが出てきた。

見覚えのあるゲイバー。

「タックスノット」!!

 

 

ああ、この人はタックスのタックさんだった。

 

 

一挙に30年、時間が戻る。

このカウンターで酔ってつっぷした私の耳に笠置シヅ子の歌が。

 

「なにこれ」顔を上げると。

「笠置シヅ子、いいでしょ」

 

それから私は彼女にハマって「私の猛獣狩り」を唄ったのだった。

 

 

そして。

タックさんの愛した人。カズ。

 

同い年のシャンソン歌手。

エイズで早くに天国に召された透明な歌い手。

 

 

二人の若き日の写真が映る。

 

それは、私の若い日そのものでもあった。

 

 

若いままのカズと、70才になったタックさん。

そしてカズも同じだったはずの63才の私。

 

 

 

タックさん、そうかもう70才になってたんだ。

 

わからなかったよ。

 

 

 

番組を見終わって、睡眠薬を飲んだ。

ぜんぜん寝付けない。

 

 

タックさんも、上品な上等な人だ。

 

どんな生き方でも、やっぱりこれなんだな。

 

誰を、誰と、どう愛し合っても、上品で上等なニンゲンだったらいいんだ。

 

いや。

ホントの愛ってのは、ニンゲンを上品で上等なもんにするんだな。