玄関に水がたまってる、変だ。
と父親が言う。
それは、雪を歩いてきた靴からのものだ。
と私が言う。
でも、こんなの見たことない。
と父親が言う。
四年前もこんなだった、けど父さんは忘れてしまったのだ。
と私が言う。
父親は納得せず、外に出て雪かきを始めた。
納得せずに雪かきになってしまうのが不思議だけど、私も雪かきをする。
スコップが大小二つあって、私のほうが大きい。
でも、ぐんぐん雪かきする。
もういいんじゃないかと思って玄関に戻るけど、黙々と雪かきしている父親を見ると、やっぱり私も雪かきする。
幸いなことに、道路側のところの大半は、お隣の奥さんがやってくださったらしい。
四年前は息子さん、今回は奥さん。
本当にありがたい。
老人だけの家では、こんな親切がなによりありがたい。
歩いていると、道路の雪かき状態で、そこに住む人の「意識」がわかってオモシロイ。
まず、どうにもならん状態なのが、駐車場。
だあれにも責任がない、ってことがはっきりする。
そして、アパート。
管理人のいない、こういう集合住宅はまったく手つかず。
それからコンビニ。
入り口付近だけ雪かきしてあって、あとはなし。
そんな時給もらってないっすな感じがして、これはこれでまあしょうがない。
意外なのが、けっこう立派な普通の家。
道路側をまったく放置している。
コンビニじゃあないんだから、入り口だけじゃなくて、もうちょっとみんなのこと考えてもいいんじゃないかと思う。
老人だらけなのかなと思うが、いやいやそうでもない。
ちょっと前に、増築した若い世代の家だってそんなだ。
とはいえ、なんだかんだいっても、みんなたいてい雪かきしてる。
自分だけじゃなく、他人のことも思って雪かきしてる。
だから、大雪のあとでも、歩けたのだ。
ありがたい。
父親と私は、雪かきを終え、ふうっとしてみかんを食べる。
これはこれで幸せなのかもしれん、と思う。