薬局に行く。
顎関節症の母親の痛みが、まだあるからだ。
最近医者では、最低限のクスリしか出さないようで、後は自分で買えということらしい。
売薬にあるものは、自分でなんとかしろということだ。
まあ、保険医療の危機を思えば仕方がない。
で。
先だって買ったクスリを写真に撮り、薬局に。
「ポパロンください」
「え?ポパロン。ええとええと」
年配の太った薬剤師のオジサンが探してくれる。
「この前もそれいただきました」
「あ、これですね」
取りだされたクスリの名前をよくみると。
ポパドン。
「あ、ポパロンじゃなくてポパドンでした、ごめんなさい。でも、なんか怪獣の名前みたいですね、これ」
「ああ、ほんとですね、円谷さんの怪獣にこんなのいましたね」
「それも、一番弱いヤツ」
「すぐやっつけられちゃうやつ」
「ええええ、そんな感じですねえ」
「いろんな怪獣いましたねえ」
「ほんとですねえ、懐かしいですねえ」
「昭和の子供ですから、私」
「私だっておんなじです、昭和の子供です」
この薬剤師のオジサンは、最近急に老けた感じがしていた。
というか、どこか体調が思わしくないのではと思っていた。
はははは。昭和の子供。
と、おそらく同じくらいの年齢の二人が年の瀬に笑い合う。
半ズボン姿の、昭和の少年のオジサンが見えた気がした。
昭和の子供たちは、こうしてどこでもここでも、一生懸命生きてる。
いろんなこと抱えながら、一生懸命生きてる。
胸があたっかくなった。