レコーディングのミックスダウンの確認に行く。

 

ミックスダウンは、いろんな音を整理して、バランスを整える作業。

これなしに、録音物はできない。

 

 

 

初めてのスタジオは、京王線の千歳烏山(ちとせからすやま)。

 

 

ここは、私がこの世に「生」を受けたところだ。

 

東京に出てきた若い両親が、それこそ胸弾ませアパート生活を始めた場所。

 

 

 

母親は、私を里帰り出産しに水戸へ帰ったが、その後も「烏山」という地名は、ずううっと親しいものになった。

 

 

どんどん駅が新しく、みんな同じようにぴかぴかになる中、この駅には、まだ昭和の名残りがある。

 

昔の日本映画に出てきそうな踏切もある。

 

 

 

あ、ここだ、ここだ。

 

懐かしい思いがこみあげる。

 

赤んぼの記憶が、還暦過ぎた体によみがえる。

 

 

不思議なものだなあと感慨にふける間もなくスタジオに。

 

 

 

こんなものかなあ、どうなのかなあ。

たいていいつも迷う。

 

実は、この作業がいちばんコワい。

 

 

それまでのざらっとした音が整理されて、ツマラナイと思えるようになることも多かった。

 

必要なものだとはわかっていても、あの生まれたてみたいな音がどうしてうまく残らないのかなあと思うこともあった。

 

息づかいが消えてしまう不安や不満。

 

 

今回もそれがコワかった。

 

 

途中、やっぱりこんな感じかなアと思ったころ、武部さんが。

 

「もうちょっと歌大きくしてみましょう」

 

 

コンマ幾つ上げくらいのものだけど、これでまったく変わってしまった。

 

 

隠れていたものが現れた。

 

 

ああ、良かった。

 

 

 

 

こうして、無事終了。

 

「隆さん(松本さんのことだ)によろしくお伝えください」と武部さんは帰られた。

 

 

(武部さんは斉藤由貴さんの「卒業」からの三部作のアレンジをされていたのだった)

 

 

 

で。その三部作の一つ「情熱」。

 

明日、CSフジのももクロさんの生放送番組で唄います。

 

松本隆特集ということで、去年に続いて。

 

 

 

このエネルギーの満ちた現場で、仕事納めになります。

 

 

ふううう。