芸能人は歯が命。
という名コマーシャルがあった。
それからやたら歯の白い人が増えて。
歯っていうのはよくしたもんで、白すぎると浮く。
まさに「浮く」。
なんでも良き程度、良き加減てのがあるらしい。
で、芸能人のはしくれの私は、3か月か4か月に一度、歯医者でメンテナンスをする。
汚れをとって、歯石をチェックして、磨いて、それから汚れをつきにくくするフッ素らしいものを塗っておしまい。
この間約一時間。
これが鬼門だ。
つい眠くなる。
口を開いたままくくくと寝てしまう。
これはあぶない。
衛生士さんにとって迷惑この上ない。
ハッとして衛生士さんの指など噛みきってしまったら大変だ。
そうは思っても、昨日など、ついうとうとする。
うとうとする意識の中で、昔の歯医者さんを思い出した。
大学の頃通った高田馬場の歯医者さんだ。
「ここが痛むんですけど」
と、歯を指し示したら、怒られた。
「違いますよっ!これじゃない!」
ええええっ。
あまりの形相に、私なにか失礼したかとあわてた。
「いえ、でもここが痛むんです」
もう一度いうと。
「これは親知らずなの!」
だから、痛い歯の真逆にところの歯茎のせいなのだ、というのだった。
ええええっ。
何と奥深い「歯」の世界。
てえことではあるけど、なにもこんなに怒らなくても。
この女医さんは、こうして逆上し。
「シロウトは黙ってな」的オーラを発し続けた。
おお、コワい。
すっかり縮み上がりながらも思った。
この女医さん、どっかやられてるな。
この怒り方は、尋常ではない。
それからずいぶんと経って、この女医さんのヒステリーを思い出した。
その頃、私も見境のない怒りで、カラダが震える経験をしていた。
怒りで目が白くなりながら、歯医者の女医さんを思った。
今、私おんなじかもしれない。
この歯医者さんは、私が通ったそれからしばらくしてなくなってしまった。
やっぱりなあと思った。
もともとは夫婦でされていた、古くからある歯医者さん。
それを一人で切り盛りし、自分の感情を抑えきれない女医さん。
いろんなことがあったんだろうなあ。きっと。
歯止めの効かない感情の揺れの中で、苦しんだことだろうなあ。
と、今は冷静に思う。
そうそう。
スーパーのジョニー・デップさんですが。
どうやら、扮装は土日だけだったらしく、もう全員が普通の人に戻っていました。
やっと落ち着いた店内になりました。
だからさ。なにもすることないじゃん。
あんなコスプレ。
と思うのであります。