ラジオ深夜便のアンカー、森田美由紀さん。
途中のちょっとした休憩時間、チョコレートを配ってくださる。
見るとロイズ。
ああ、森田さんは札幌のかただったと思い出し、そのことを言うと。
「ええ。母親が末期がんで」と。
スタッフによると、そのためしょっちゅう東京札幌を行き来しておられるらしい。
打ち合わせを終え、スタジオに入り、本番までのちょっとした時間。
森田さんは「すみません、あんまり寝てないので」。
なので、なにかしらの失敗をするかもしれない、だから助けてくださいね。
そんな会話をしていた。
その時は、その寝ていない理由についてはまったくわからなかった。
おそらくロケなど仕事のせいだろうと思っていた。
スタッフ一人一人に、楊枝を刺した生チョコを配る、その気配りの様子はいつもと同じ森田さんだ。
私が尋ねなければ、個人的なことなどお話しするはずもなかった。
聞いてしまって、申し訳ないことをしたと思うのと、ああ、みんな同じような状況を抱えているのだなあという親近感と。
森田さんは、夜のニュースを担当されていたこともある報道キャスターのサキガケだ。
その緻密な下調べと、明快な口跡で、抜群の安心感がある。
この人が中心なら、もう大丈夫というような安定感と許容量がある。
それは、良くも悪くもNHK的でもあるから、はたしてこういう娯楽系の番組はどうなんだろう、など思っていたこともあった。
そうして何回も深夜便でご一緒した。
だんだん森田さんという人が見えてきた。
(こういう言い方もまったく失礼な話だ)
「これってどうです、クミコさん」
と音楽がかかっているとき、森田さんに聞かれることもある。
「いいですねえ、こういうの」とか、「なんだかどうもわからないですねえ」など、好き勝手にいう。
もちろん放送されていない、私たちだけの会話だ。
昨日など、そんなあれこれが私たちの間に飛び交った。
音楽ともしかしたら関係ない話もある。
そのたび、二人で笑い合った。
森田さんは、これから朝の5時まで放送を続けるのだ。
どれだけの重さが彼女の責任感ある背中に乗っかっているのだろう。
だけど、だから、私のような「いい加減女」に、ちょっとだけ気を許し、気分転換をされていたのかもしれない。
笑い合うことで、少しの元気を仕入れていたのかもしれない。
森田さんも私もほぼスッピンといってよい、この深夜便での逢瀬。
リクエストから見える皆さまの人生と、私たちの人生と、それぞれが交錯する。
いっぱいの人生が、電波で行き来する。
それぞれに思いを馳せる。
ぼくらはみんな生きているー。
生きているから楽しいんだー。
生きているから悲しいんだー。
次の出演は、12月。
ああ、時は過ぎていきます。