また「よっちゃん」に会った。
はたして、こんなふうに呼んでしまっていいのか。
いったいいつからこんなふうに呼ぶようになったのか。
井上芳雄さん。
言わずと知れたミュージカルの王子。
おそらく、事務所代表のユウコリンが、そう呼んでいたのではないか。
「よっちゃん」
この懐かしい響きに、芳雄くんはよっちゃんになった。
(お許しを。)
で。
そのよっちゃんが、毎週日曜日の夜、ラジオ番組を生放送しているという。
昨日などは、舞台の千秋楽の日。
どれだけ疲れているかと思うが、さすがよっちゃんにスキはない。
持ち前の集中力と丁寧さで、生歌を披露する。
ピアノの大貫さんとの絶妙にグルーブする「マイ・フェバリットシングス」。
「大貫さんとのご縁も、クミコさんからで」とよっちゃんはお礼をいってくれる。
(いえいえ、良いピアニストは、みんなで分け合うのです)
スタジオには、お客さまが9名ほどみえている。
よっちゃんのお客さまは、上品で礼儀正しく、そして温かい。
皆さんが見守るような雰囲気の中、二人で「車輪」を唄う。
私は、それまで、なんやかやと声を大きくしていたせいもあり、がさがさの状態。
よっちゃんは、スターの絶対条件「のどの強さ」で、変わらず濁りのない美しさ。
でもまあ、ひさしぶりの「車輪」は、やはり良い歌だった。
三木たかしさんが、最後の力を振り絞るように私たちに残してくださった歌だもの。
時は止まらない
めぐりめぐる車輪のように
全部 昨日にかえていく
この覚和歌子さんの歌詞が、ますます沁みます。
そして、スタジオのよっちゃんを見ていて。
「男子一生の仕事」って言葉が浮かんだ。
そうだ、男子一生の仕事を、よっちゃんはしてるんだな。
ずっと、していくんだな。
と、思った。