レコード会社のコロムビアの目の前は、ホテルオークラだ。
かつては、そこのプールも見えて、なかなかに良い眺めだったが、今はそれらも壊され、更地になり、そして、新しいオークラを建設中だ。
昨日、それらが見渡せる部屋で、取材用のメイクをしてもらっていた。
大きな重機が、ゆっくり動き、作業員があちこちで働いている。
これってゼネコンなんだよな。と思う。
ゼネコンていうと、なんだか悪いイメージがあるけど、それってどうなんだろう。
ちょっと前に「サラメシ」という番組で。
「社長のヒルメシ」みたいな企画があって、いろんな社長さんが出てきた。
その中で、対照的だったのが、商社の社長さんと、ゼネコンの社長さんだった。
どちらも一流企業。
高層ビルのデカいワンフロアにある商社の社長室。
机にいくつものパソコンが並んでいて、お洒落な社長さんは、それらをチェックしながらサンドイッチを食べている。
「ここの何人かは年収一億ですわ」と、居並ぶ部下たちを見渡しながら、社長さんは自慢気にいう。
社長さんと同じように、みんなお洒落で、空中な感じがする。
そして、今度はゼネコンの社長さん。
この社長さんは、作業服だ。
そうして、現場を回って、そこの作業員たちとともに食事をする。
カラダ使ってるひとたちにはアッタカイものをと、現場にしつらえられた、出店のように並ぶうどんやカレー。
社長さんも、もちろんそれで、その口調も姿も、まるで街の世話役のオジサンのよう。
丁寧で低姿勢だ。
現場の人たちに、気持ちよく安全に働いてもらわないとどうにもなりません、それが建設業ですから。
まあ、どちらがいいとか悪いとか、そんなことではないけど。
父親がクスリ工場の施設を作るエンジニアで。
小さな町工場の煙突を見ながら育ってきた私なんかは、どうしてもゼネコン社長さんに親しみを覚える。
それこそ「汗水たらして働く」なんてことこそ、ステキなことに思える。
働く。ってやっぱりそういうことじゃあないのかなあ。
と思うのは、私がアナログ人間の証拠だろう。
歌ってのは、だから汗水たらして力使って一日働いて、そんでもって夜お風呂に入った時に、ふっと鼻歌で出てくる、それがホントの歌。
まるきり「昭和のお風呂」風景。
そんなことずっと思ってる。
いまだに思ってる。
時代はこんなに変わっているのに。
すさまじい速さで変わっているのに。
しょうがないなあ。
だって。
父親は、いまだに植木に水をやるのに作業服を着てるのだもの。
子供の頃から見てた作業服の、胸ポケットに名前の刺繍が入ったやつ、ずっと着てるんだもの。
しょうがないよなあ。