役者の篠井英介さんの芝居を観にいく。
英介さんの本領は女形だ。
日本舞踊の名取でもあり、金沢で生まれ育った英介さんには、和の香りが漂うけど、そのお顔立ちは洋物に良く似合う。
映画にもなってメリル・ストリープが主演したことでも有名な「世界一オンチな歌手」フローレンス・フォスター・ジェンキンス。
そのフローレンスさんを英介さんが演じた。
ご存じの方もおられると思うけれど、このフローレンスさん。
ご自分ではオンチと思ってもいず、ただただ唄うことの喜びで、ついにはカーネギーホールにも立ってしまった。
全席完売、外にはその十倍の値段をつけたダフ屋まで出たという。
素人金持ちオバアチャンの勘違い、とかいうレベルを超えている。
いったいどうなっとるんじゃ。と芝居を観ていくうちに、そうかそうだったんだ、そりゃあそうだ。
と、フローレンスさんに寄り添っていく観客。
その「愛しさ」ともいえる、神さまからの使い人ともいえる、純真な魂。
それは、ほんとのフローレンスさんだか英介さんだか、もうごっちゃになるほどだ。
そのくらい英介さんは素晴らしかった。
「この先きれいな女役もなかなかやれない歳になりました」
と英介さんはいう。
それでもいいじゃない、と私は思う。
いや、英介さんなら、たとえどんな女役でもそれは「きれい」だと思う。
現にフローレンスさんは、少女のように可愛くチャーミングで、上品で、それは英介さんそのままだった。
いくつになっても英介さんは英介さん。
若い頃からフィールドは違うけど、一緒に歩いてきた友人、あるいは戦友。
私たちは、歳なんか逆手にとって、この歳でなければできない芸を見せていきましょうよ。
哀れや悲しみやおかしみ。
若い人の何十倍も知ってしまった私たちだからこそ、できることがたくさんありますもん。
この舞台「グローリアス!」
まだあと一週間続きます。
がんばれ英介さん。