BS11「日本の名曲」。
生放送二時間をする。
この番組はこれで二度目。
生放送なので、中継が途切れるなどもトラブルはあるが、それでもきっちり進めていく。
スタッフの方々と、司会の島崎和歌子さんの機転のおかげだろう。
いい加減、正しくは良い加減、の気持ちが大切なんだろうと思う。
良い加減は、良い余裕を生む。
吉幾三さんの特集があった。
もちろんご本人も登場。
吉さんという人は、まったく豪放磊落、そして繊細。
絵にかいたような「いい男」だと思う。
吉さんのエピソードは尽きることがないらしい。
「もう酒飲んじゃうとさああ」と笑っておられるが、そのエピソードにかかわった人たちに、困惑と笑いと、そして後から思えば「幸せ」を届けたんだろうなあと、そばで聞くたび思う。
ここで書くのもなんだけど、吉さんならきっとおゆるしくださるだろうと思いつつ。
吉さんは、どうやら酔っ払って「お尻」をだしてしまうことがよくあったらしい。
テレビの本番でそれをやってしまったこともあると聞いた。
すごいなあ。
「尻だし」って、そういえば、私の若い頃でも、まれにあったなあ。
シャイだけど野生の名残りの消えない、そんなまさに「男の子」のような人たちだった。
吉さんは、そういえば、まったくそんな人だ。
あのカラダそのまま、大きくて、優しくて、でも、細やかで。
吉さんの歌は、吉さんにしか書けない。
聞くたび、どうしてこういう歌ができるんだろう、どうしてこういう唄い方ができるんだろう、と思う。
哀愁。
生きてることの哀愁を、これだけ聞かせる人はいない。
自作して自演する。
なのに、押しつけがましいところや、自己愛みたいなとこがいっさいない。
そこにあるのは、ただ哀愁だ。
悲哀というのでもない。もっと深く、あきらめにも近い淡々としたか哀しみ。
そうか、吉さんの歌は「悲しい」じゃなくて「哀しい」なのだ。
実は以前、クミコさんにシャンソン風な歌をと一曲いただいた。
ありがたいことで、天にも昇る心持ち。
でも、なかなかご披露できずにいる。
申し訳ないことと謝る私に、「いいのいいの、持ってて」と吉さんは明るくいわれた。
でも、いつか良き頃に、歌わせていただきます。
必ず。