ひさびさに友人たちとの飲み会。
一人だけ男性がいて、血尿が出たという。
大したことではなかったらしいが、それに対しての女性陣の反応がすごい。
なんてことないわよおお。
男ってさ、赤いもんに弱いのよねえ。
あたしたちオンナはさあ、血なんて見慣れてんだからさあ。
そうよ、何十年も見てきたんだからさあ。
あたしは、七年前まで見てたよお。
ええええ、そんなに長いことあったの、やだああ。うっとおしい。
おばちゃんたちにコワいものなどないのだった。
あげく、血尿なんてこわくないっていう替え歌まで唄って、気勢を上げた。
たった一人のその血尿男性は、なすすべがない。
長生きって、どうなのよ。
この頃、そんなこと考える。
私だけじゃなく、きっとみんな考える。
長生きして、いいことなんて思いつかない。
何十年も前のイヤな出来事を、今頃思い出しては、何回も何回も言い続ける。
昨日のことのように言い募る。
そんな人を見てきた。
父親も、そういう人になってきた。
いったいどれほどの不満や怒りを、人は押し隠し生きてきてるんだろうか。
それをぎゅうぎゅうに箱に詰めて、知らんぷりしてたら、ある日、その箱がぱぱあと開いてしまった。
玉手箱から外へ出てきたのは、妬みや怒りや不満の罵詈雑言たち。
なんとまあ。
老いさらばえるのは、姿形だけじゃない。
長生きだけはしないようにしよう。
心に決め、がん検診をキャンセルした。
あたしなんか、一回もそんなのやったことないよお。
でもさ、乳がん検診はやってるよお。
ええ、あれって痛いじゃん。やだよお。
だいたい胸なんかないくせにさあ。
なくたってあっちこっちからにゅろにゅろでてくるんだよ、おっぱいって。
いやいや、マンモグラフィより、エコーがいいよ。
でもあれ自費になっちゃんだよね。
7000円くらい。
やだよお、高いよお。おっぱいに7000円なんてやだよお。
オバちゃんたちは、こうしてどこまでもかまびすしく、元気なのだった。
そして、これから、もっともっとにぎやかで前向きなおばあちゃんになるのだと確かめ合った。
もはや。ババアにこわいもんなし。なのだった。