メロディーがある。
ただ漠然とメロディーがある。
それこそ海とも山とも野原とも都会ともわからない。
そんなふうに、ただメロディーがある。
そこに、言葉をつける。
すると、これまで宇宙のようだった漠とした世界が、きゅきゅきゅと収縮するように「世界」があらわれる。
物語があらわれる。
これが作詞の仕事なのだった。
ゼロから建物が突然構築されるような。それが作詞という仕事なのだった。
アルバムに入れる歌たちに取り組んでいる。
昨日は横山剣さんと菊地成孔さんの歌の仮歌を入れた。
横山さんの曲は、ゴキゲンという表現が一番のノリの良いもの。
菊地さんは、ジャズミュージシャンらしい、ここでもあそこでもないような不思議な曲。
この二つに松本さんの言葉が乗った。
その瞬間、ひゅるひゅるひゅると、世界ができあがった。
メロディーだけという、ある意味「無」から「物語」が出来上がった。
まるで魔法のような。
これぞ松本隆。
なんて、なんとまあ失礼ないいかた。
それでも、そういってしまうほど見事なものだ。
その言葉に連れられ、私は旅をする。
新しい歌の旅がはじまる。
ああ、なんちゅう幸せもの。
夏は、こうして六つの歌との旅をします。
暑さでとろんとろんしそうなアタマとカラダにカツを入れて、旅をします。
途中、なにがあっても、めげず落ち込まず、きっちりゴールしたい。
「ボン・ボヤージュ」
君に良い旅を。
自分で自分に言ってます。