その昔。

越路吹雪さんは、銀座のヤマハホールで、十年間リサイタルを開いていたという。

その後、日生劇場に移り、伝説の越路吹雪リサイタルになる。




そのヤマハホールは、もう新しく生まれ変わって、そこで、年に一度「シャンソンの黄金時代」と称するコンサートが開かれる。


仕掛け人の高橋さんは、宝塚の方々とも縁が深いことから、様々な元トップの方たちが日々を彩る。





昨日。

凰稀かなめさん。

いやはや。これが同じニンゲンかと思うほど、体各所のバランスが違う。


スタッフツヅラの胸のあたりに足がある。

さすが、男役のトップスター。ほれぼれする。





宝塚とシャンソンは切っても切れない関係とはいえ、凰稀さんは、とても若い。

去年初めて歌いました、と緊張がかくせない。




彼女のお母さんくらいの年の私は、ホントはナンチャッテシャンソン歌手なのに、ちょっとは堂々として出演。

ところが、昼公演はまだしも、夜公演では、そのガラッパチ具合が隠し切れず、それはそれで楽しいものになった。



凰稀さんとデュエットのフィーリング、二つの声なのに一つに聞こえてくる。


なんでこんなに一つなんだろう、気持ちいいなあ、と思いながら唄う。




ヤマハホールの脇のビル。

今はモンブランという万年筆で有名なブランドだけど、そのずっと前には銀行だった。

そして、そこの地下に銀巴里があった。


建物自体は変わっていない。


裏口も綺麗になってはいるけど、基本そのまま。



恋してるんだか唄ってるんだか、わからないほど浮き足立っていた日々。

やっぱりあれは美しい日々だったよなあ。



ううううう。

甘酸っぱい思いにむせそうになりながら、銀巴里跡と書かれたちっちゃな石碑を撫でた。



帰りこぬ青春、やら、ラ・ボエームやら。
胸キュン系のシャンソンは、ことかかぬほどあるけど。


いいや、そんなもん振り返っててもしゃあない。


さっさと前向いて歩きましょ。




さ。これから福山。
新幹線に乗ってます。