ニンゲンに恋をした人魚は、その罰として、泡となって消えてしまう。
子供の頃「人魚姫」の童話を読んだとき、ものすごく悲しかった。
ただ悲しいっていうんじゃなくて、割り切れなくて悲しい。
じくじくとなんでなんでと、悲しい。
人魚という言葉の出てくる松本さんの歌詞に、つんく♂さんの曲が乗り、はじめて唄ったとき、その「人魚姫」のことを思い出した。
海の中で、これから泡になって消えてしまう前に、もう一度上に上がりたい。
水面から顔をだしてもう一度愛しい人を見たい。
でも、果たせないままじっと水中で目を凝らす。
水中にきらきらと光りが踊り、カラダにまとわりつく、水のようなゼリーのような感覚。
もう自分は泡となってるのか。
そんな経験したこともない人魚姫の感覚が、カラダの奥底から出現してくる。
不思議な歌だなあ。
でも、ムズカシイ歌だなあ。
山崎ハコさんから、深夜メールが届いた。
ハコさんは、昨日さっそくこの歌を聴いてくださったのだった。
ハコさんの指摘は、音楽家らしく冷静で、的を得ていて、そしてなにより愛に溢れていた。
いつも迷える歌い手を励まし、そっと手を伸ばしてくれる。
それは、永久に水中にいなければならないような、透明な絶望感から、水面へと視線を上げてくれるような励まし。
ありがたいことだなあ、と胸が熱くなる。
ちなみに、この歌のジャケットはイラストです。
塩川いづみさんという女性の書かれたもので、見た瞬間、ああこれだと思いました。
書かれた横顔の女のひとの見ている景色は、きっと水中にいる人魚姫と同じだろうなあと思いました。