ひえええ。
青梅街道を自転車で。
ゆっくりゆっくり走っていると。
とつぜん、左側から黒い影。
店の隙間から、歩道を横断という感じ。
猫だと思った。
急ブレーキをかける。
間に合わない。
「ああああっ!」
その声に通行人も足を止める。
次の瞬間、バタバタバタと飛び上がる影。
ハト。だった。
ああ、良かった。轢かないで。
私も通行人もほっと安堵する。
それにしても、この頃のハトたちの傍若無人さは目に余る。
通行するニンゲンをなんとも思っていない。
ほらほら踏んづけちゃうよ、といいながら、ハトの間をすり抜ける。
それでもハトは一向に意に介していない。
反省の色もない。
こうまでニンゲンを信頼してんのか、愛いヤツじゃなんて思ったらいかん。
今回みたいに、こっちがひっくり返りそうにもなる。
甘い顔見せないようにせんとな。
その前日。
大きな交差点で、信号待ちの間、ハト集団を見ていた。
カラダを異形にふくらませて威嚇する一羽がいる。
こういうハトは周りのハトの存在が気に食わなくて、あっちいけあっちいけとつきまとう。
威嚇されたハトは、しょうがなくて近くの陸橋に飛び渡る。
そうこうして自分以外の群れを全部追い払った異形ハト。
どうするかと見ていると。
異形から普通のカラダに戻り、ミゾの水など突いていたが。
そのうち、みんながいる陸橋に飛び渡った。
そこで、また異形にカラダを膨らませ、つんつんと周りのハトに寄っていく。
ああ、しょうもないやつだなあ。
威嚇しないで、普通のカラダでみんなと仲良くしてりゃいいのに。
なんでそんなことわからんのだろう。
自分一人(いや一羽)は、ぜんぜん面白くもないってこと、わかってんだから、もっと素直になりゃあいいのに。
陸橋を見上げるうち、信号が変わった。
ハトはハトで大変なんだろうなあ。
異形のハトだって、大変なんだろうなあ。
そうせざる得ない事情ってもんがあるんだろうなあ。
春のハトも、ヒトも、今日も一生懸命生きてます。
よいさっと。