「次はナニナニ。すぐに発車しますからお急ぎください」

 

 

こんなアナウンスに、アレと気づいたのは、この前福山に行く時だった。

 

「すぐに発車いたします」

 

こんなこと、いってたっけ、これまで。

 

 

 

 

一昨日。

名古屋に行くとき。

 

 

このアナウンスは、やっぱり流れ。

 

 

生放送でおじゃました東海ラジオの番組で、そのことを話したら。

パーソナリティの「流れ星」のお一人、ちゅうえいさんがすぐに。

 

「それそれ、ぼくも気づいてました!」とぽんと返してくれた。

 

 

「なんかねえ、ドアにはさまったアリみたいな自分が想像できちゃってコワいんですよねえ」

というと。

 

「クミコさん、アリなら、とうにつぶれてますわ」

 

 

 

 

 

普通の電車じゃない新幹線が、着く前から「すぐ発車しますから」という。

 

わやわやわやと、急く気持ちになる。

 

胸のあたりがじゅうんとしみる。

 

心臓がどきどきする。

 

 

 

「脅しじゃん、これ」

 

 

 

巨大な新幹線、その後ろにあるもっともっと巨大ななにかが、おおいかぶさってくる。

 

一刻一秒を争う、正確無比な怪物。

 

 

なんだか息苦しくなってくる。

 

 

 

そんなこと、気にすることじゃあないですよ。と強い人たちはいうだろう。

 

でも、もうそんなに強くない生き物になっている私には、こんなアナウンス一つが苦しい。

 

 

 

 

大学の頃。

福岡から出てきていた友人がいった。

 

東京きて、一番びっくりしたのって、電車のアナウンス。

だって、人がまだ乗り降りしてるのに「発車しまーす」っていうんだもん。

驚いたなあ、焦ったなあ。

 

 

 

こんなこと、当り前のことだった私は、そんなもんかなあと思ったけど。

 

 

今、その時の友人の気持ちがわかる。

 

 

 

40年たって、同じように焦ってる、びっくりしてる。

 

 

つぶれたアリみたいな自分が見えてくる。

 

 

すべてを放りだして、逃げたくなってくる。

 

 

こんなのイヤだあ、私ニンゲンだもんと一目散に駆けだしたくなってくる。

 

 

 

ああ、なんちゅう春。