「愛」と「平和」。
この二つを掲げたコンサートは多い。
歌、はこの二つなしに生きていくことができない。
昨日。
江戸川区の「平和と愛のコンサート」にお招きいただいた。
東京は西と東でだいぶ様相が違う。
東の葛飾区とか江東区とか墨田区とか。
このあたりに行くと、急に空気の密度が濃くなった気がする。
ここ何十年も西ばかりになってしまった私だけど、子供の頃は赤羽と池袋が「シマ」だった。
結婚した時も、足立区の五反野というところに住んだ。
都心で酔っ払ってタクシーに乗ると、何度も「五反田」に連れていかれるので、引っ越した。
数年前。歌謡曲を唄いたいと、レコード会社に申し入れ、キャンペーンに出かけると、たいていそこは東、つまり下町だった。
生まれてはじめての、レコード屋さんでのキャンペーン。
それが江戸川区小岩の音曲堂さん。
「私、音曲堂さんでクミコさんにお会いしたんですよ」
と、昨日のサイン会でお客さまがおっしゃる。
とたんに、親戚に会ったような懐かしい気持ちになる。
まあ。といって手を取り合う。
「INORI~祈り~」がききたくてお越しになったお客さまがいらっしゃるんですよ。
終演後の軽い打ち上げで、スタッフのかたがおっしゃる。
「ご主人がガンと闘ってらして、その時、この歌が流れてきて、ああ、自分のことのように思えたって」
この歌を唄う時、いつも原爆の子の像を思い浮かべる。
原爆でなくなった人たちを思う。
でも、そうか。
それだけでなくてもいいんだな。
それだけじゃないんだな。
限りある命と向き合う人の心にも、きちんと届く歌なんだな。
そう思って歌詞をつぶやくと、確かにそうだ。
自分に中で決まりきってしまった歌が、もっと大きくなった。
これからは、もっと違う気持ちで唄える。
もっともっと広い気持ちで唄える。
歌は、やっぱり人とのかかわりの中で育つ。
なんてありがたいことだ。
下町に行くと、下町に住みたくなる。
魚のおいしい飲み屋に夜ごと通いたくなる。
ずらずらとした袢纏をひっかけて、日本酒を飲みたくなる。
江戸川の皆さま、ありがとうございました。
また、いつか。