「すっぽん」に乗った。

 

 

生き物の「すっぽん」ではなく。

舞台の花道の途中にある、あのせりあがってくるもの。

 

それを「すっぽん」というのだと今回初めて知った。

 

 

 

今回の舞台では、このすっぽんと着物。

 

これが初めてシリーズという感じ。

 

もっとも、着物は、二十歳の時の振り袖と、その数年後のウールの着物というのを経験しているが、どちらも母親が着付けしてくれた程度のもの。

 

 

 

振袖の時は、「でかい市松人形」と言われた。

体重も今より20キロほど多く、髪も長い。

 

ウールの着物の時は「中居さん」と言われた。

オレンジのチェック柄が、なんだかそんな感じだった。

 

 

なので、着物には怖気づいていたのだが。

 

今回。

現代風な黒柄と、光る帯を締め、黒レースの足袋をはくと。

まあ、どっかの女将な感じにはなった。

 

 

やはり年齢というのは、すごいもんだ。

 

 

 

 

その着物姿で「すっぽん」に乗る。

 

 

乗るためには、地下に行かなくてはならない。

 

 

しんしんと冷えた、その暗がりに行くと、言葉は悪いが「地下壕」という気がした。

 

 

そこで、裏方さんが二人待っていてくださる。

 

 

今でもこれだ、これからの寒さはきっととてつもなく苛酷なものだろう。

 

そんな中でも、この方たちは、薄い仕事着と足袋で仕事をする。

 

 

自分がしっかりと着こんだ着物であることが申し訳ない気がしてくる。

 

でも。

 

これが「舞台裏」ということなのだ。

 

 

 

それぞれが、それぞれに「仕事」をする。というのはこういうことなのだ。

 

だから申し訳ないとか思ってはいけないのだ、と思うものの、やっぱり申し訳ない気持ちが消えない。

 

 

 

それくらい、この歌舞練場は「古都」のものだった。

耳を澄ませば、昔のいろいろな息づかいが聞こえてくるような建物だった。

 

 

 

で。

 

 

初すっぽん。

 

ゆらゆらしないよう、足を踏ん張り舞台に登場。

そこへ照明が当たる。

 

 

 

うむむむ。

 

 

クセになるなあ。この快感。

 

 

 

 

 

 

 

そのせいか、コチラに帰ってきてから、ふと足袋や帯の感触が恋しい気分に。

 

 

いやいや。

あかんあかん。

 

今日はもうハイヒールででクリスマスソングを唄わんと。

 

 

なんかせわしないなあ。