京都駅に着く。
コロムビアの方が迎えに来てくれているらしい。
ホームに降り立ち、あれどこかなと思って見回すと、ダークスーツの男性二人の背中。
あ、これだこれだ。
私がなかなか出てこないので、ここで待っててくれてるんだな。
そう思って、その一人の背中をポンポンする。
ニコニコしながら「お待たせしました!」
その人、キョトンとしてる。
あれ、私だってわからないのかな。と今度はもう一人の背中をポン。
その人もキョトンとしてる。
その時、わかった。
人違い!
と、その時私の腕をつかんだ男性。
あ、水野さんだ。
関西担当のコロムビアの宣伝マン。
「クミコさん、誰に話しかけてんですか」
とまあ。最初からしくじりの京都。
いくつかの仕事を終え、本来の目的。
ご飯会。
松本さんと一緒に計4名。
予約の取れない名店「なかひがし」へ。
女将の中東さんは、神楽坂女声合唱団のメンバーでもある。
知り合ってからずいぶんになるのに、お店にうかがうのは初めて。
食べきれないほどのお料理が次から次へ。
それでも、野菜と魚なので、膨れたお腹はすすっと、へっこむのも早い。
やっぱり京都は京都だよねえ。
と、わかったようなわからんようなため息。
松本さんは、美しいお料理をささと写真に撮る。
私は、ただ不調法に食す。
これまで決して食べることのなかった「なれ寿司」。
まさに発酵食品の魔界の大王。
意を決して挑戦。
いやはや、なんとまあ。
人生最後の食事がこれでもいいなと思う。
いやいや、それには官能的すぎるだろう。とも思う。
「なかひがし」の「なれ寿司」は禁断の極上の味だった。
最終の新幹線に乗るべく店を出る。
隣席のヒラグリが美輪さんのYouTubeを広げる。
便乗して見つつ。
あ。美輪さんって「なれ寿司」に似てるな。
と思った。