シャンソンだけのディナーショー。


これって、初めてだ。



「クミコ シャンソンを唄う」というタイトル。


横浜のニューグランドホテル。


戦前から残る由緒ある建物は、山下公園、埠頭のそば。


デカい客船が停泊してる。






そういえば、若いころ、横浜デートといえば、このあたりだった。


デートといえば、鎌倉か横浜。


これが、ちょっと遠出のデートだった。





なんだかなあ。


ついこのまえのことのようだなあ。




でも、相手が誰だったかもう定かでないんだから、やっぱり昔のことなんだなあ。





このディナーショー。


これまでの雰囲気と違う。


静かだ。




一人で来られているかたが多いこともあるようだ。



一人で決断し、出かけてこられる。


まさに私の歌に「会い」に来てくださったのだなあ。




もちろんご夫婦で、というお客さまもおられる。


そういう方々が、同じテーブルに座ったことを機に、仲良くなられる。




一人と一人。


二人と一人。


二人と二人。


そんなふうに、言葉が交わされていく。




私の歌が、人と人を仲介している。

なんて思うと、こういう職業も、なかなかいいもんだと思う。





かくして、横浜の夜は更けたのでありました。





ちなみにこのニューグランド。


松本隆さんの作ってくださった「接吻」という歌の舞台のホテル。


そんな気がしていた。


出来上がった時からそう思っていた。




ある時。


松本さんが言った。


「どんなホテル、想像する?」


「横浜のニューグランド」


「え、そうなの?僕は高層ホテル」



えええええっ!




こんなに違っていいのか。と驚愕した。




でも。



最近お会いした時、そんな話をすると、松本さんはすっかり忘れていた。



やっぱりニューグランドじゃないの的発言までされた。





人は、やはり変わる、のだなあ。




ちなみに。

この「接吻」の出だしは。


 海猫のワルツたち  きれいだね夜明けの港
 ホテルの部屋  脱ぎ捨てた服がさざ波みたい





ほら。やっぱり。




ちょっと淫靡な感じはクラシックホテルが似合う。



淫靡。いんび。


これまた、なんちゅう魅力的な言葉であることか。


ニンゲン長くやってて良かったと思えちゃうなあ。