今日は予定がない。



なので、ゆっくり起きて、ケーブルテレビをつける。

「日本映画チャンネル」に合わせると、成瀬己喜男作品。


「娘・妻・母」と、もうちょっと違うタイトルもあったでしょうというような作品。


1960年のもので、原節子、高峰秀子、杉村春子、若き日の仲代達也、草笛光子などそうそうたる面々。


高峰秀子さんの夫に森雅之さん。と、これまた名作の「浮雲」コンビ。




番組表では、誰のどういう映画かなんてわからぬまま、途中から見始めたけれど、さすがの成瀬監督だった。





ああ、私、古い日本映画大好きなんです。


その時の日本の状況がありありとわかるから。


今はもうおじいさんおばあさんの若い時が見えるから。


町並みも、価値観も、その時の日本が見えるから。


こんな手っ取り早いタイムスリップはないから。





で。今回。

中心の母親役は名優、三益愛子さん。


「日本の母」をやらせたら、右に出るものはいない。


地味な和服を着て、白髪頭、おっとりとした身のこなし。


ああ、「おばあさん」て、こういう人だった。


私の祖母も、こんな出で立ちだった。


まさに「おばあさん」。





ところが、誕生祝のシーン登場。


「還暦祝い」。

赤いちゃんちゃんこを着てにこやかに微笑む。


おっと、どっこい。


そうか、こうだった。



還暦って、こうだった。


孫をあやし、家事はお嫁さんにまかせ、縁側でこっくりと居眠りをする。





ああ、そうだった。


これが昔の正しい「還暦」だった。



わずか半世紀での、この違い。



この国の変わったもの変わらないもの。



また胸がきゅうんとする。



こんな気持ちにさせてくれる古い日本映画。



大好きだなあ。





そうそう。


このところ年金の情報流失問題で。


電話詐欺にかからぬよう、留守番電話にしましょうってキャンペーンしてるけど。



これ、老人のことわかってないなあ。


留守電の一連の作業を難なくできる老人て、そんなにいない。



うちの両親など、説明しようとしたら大変なことになるので、とっくにあきらめた。


留守電の機能はあるけど、使っていない。



それに。


かかってくる電話を楽しみにしている老人だって多い。


そんなことないよ、知ってる人だったらすぐに出ればいいんだから、っていうのは私たちの論理。



ちょっとしたことでも、なかなかうまくできないのが、老人なのだ。


私たちにとっては当たり前のことが、難しくなっているのが老人なのだ。




1960年の頃の「老人」は60歳だったけど、今は80歳。



なんか感無量だなあ。