札幌に着いた。

さわやかで涼しい。


千歳空港行きの飛行機は、いっぱい。

ビジネスマンと旅行のおばちゃんたちがほとんど。

それに混じってカップルが少々。


おばちゃんたちは、おしゃべりだ。

威勢が良い。

もう何もコワいものはないのだ、という元気がある。

これまで、いろんなことを越えて来たんだから、もう好きにやらせてもらいますわ、な感じがする。



みんなで、ああだこうだとしゃべって笑っている。


後ろの座席は、そんなおばちゃんたち。



前の座席のビジネスマンは、寝ている。

白髪が混じり始めたアタマが、がくりとはみ出ている。


その隣のビジネスマンは、何かをずっと見ている。

どうやら、クイズの本らしい。


その白髪の大さは、もう定年に近そうだ。


きっとボケ防止の意味もあるんだろうな、クイズ。

家族もいるんだろうな。



札幌に着いて、そのクイズさんが、居眠りさんのほうを向いた。

同行者らしい。



あ、みんな必ず死ぬんだな。


突然、思った。

初老のその人の横顔に、突然思った。

その穏やかな笑顔に、人の一生が一瞬で見えた気がした。


今こうしてある、この見知らぬ人の「時間」が、見えた気がした。



そうだ、そうなんだ。


後ろのおばちゃんたちも、横の若いビジネスウーマンも、このビジネスマンたちも、もちろん私も。


みいんな、みいんな、同じなんだな。


こうして、同じ飛行機に乗り合わせるように、同じ人間としてこの世という船に乗り合わせでいる。


乗り合わせて、でも必ず降りる時がくる。

胸がツンとした。



来た道も行く道も、多少の違いはあっても、みいんなおんなじ。


そうか、そうだよな。




空港から市内への道は、五月の美しい緑でまぶしい。


生きてるって、不思議だな。


ほんとに不思議だな。