両親のところへ行く道を歩いていたら、花たちが置いてある。


そばに、萩原流行さんのご冥福をお祈りします。との文字。



そうか、ここか。



私が自転車を買った自転車屋さんや、ちっちゃなラーメン屋さんや。


みんな、その現場に居合わせていたんだろう。



きっと、大騒ぎになったんだろう。



大きな幹線道路ではいろんなことがあるけど、人身事故の現場はだれにとってもツライ。


とくに、自転車とかバイクとかの事故は「わかりやすい」だけにツライ。




昔、大好きだった友人も、そうして突然死んでしまった。


新宿歌舞伎町の四つ角で、バイクから飛ばされてしまった。



出合い頭の事故ってやつだ。




集中治療室で触った、意識のない友人の手の感触は、今もはっきり思いだせる。



もう「生きている手」ではなかった。


そうか、これが「死ぬ」ということなのか。





葬儀では、お寺の柱にすがって手放しで泣く人もいた。


男がこんな泣き方をするんだとびっくりした。






萩原さんは、あまり友人のいない人だったときく。


密葬を望んでいた人だったとも聞く。




残された奥さまが、「きれいな顔だったので良かった」と言われたのが、心に沁みた。


きれいな顔で眠っている夫に、きっと彼女は言ったろう。


「お疲れさまでした」




人生最後の「お疲れさま」を言われるその日まで、私もがんばろう。



そんなこと思った。