地下鉄の赤羽橋で降りる。


ここは「赤羽」じゃなくて東京ど真ん中。


東京タワーが、すぐに見える。



大きな病院も、付近に多い。


その病院の一つに昔入院をした。


ノドの手術をするためだ。


その頃はこの声帯の手術も大がかりで、5日間くらいは入院した。



6人部屋の窓際で、声を出せないまま、毎日東京タワーを見ていた。


朝、昼、晩と東京タワーは、そこにいた。

(当り前だ)


もう、友だちのようだった。



この物言わぬタワーと、物言えぬ私は、窓ガラス一枚を隔てて一緒にいた。



そんな思い出もあるので、東京タワーには、思い入れが深い。




そのころにはなかった「赤羽橋」という駅。


地下から外に出ると、わあという声がする。



アジア系外国人の親子がいる。


少年が、タワーを見つけた。


目が輝いている。


それから、お父さんの手をしっかり握った。



タワーと出会って、あんまりうれしくて恥ずかしそうだ。


憧れのスターと出会ったときのような感じだ。



「あ。あ。あ。東京タワーだ」




少年もお父さんもお母さんも妹も、みんながうれしそうだ。




すごいなあ。東京タワー。


えらいなあ。東京タワー。



もう57歳にもなろうという東京タワーは、こうしてみんなを笑顔にする。



誰かの笑顔になる。

誰かを励ます。

誰かの希望になる。

誰かの友だちになる。





がんばれ、東京タワーくん。

きみは、ずっと友だちだ。