幸いなことに歌の番組に呼んでいただくことが多い。
そういう時、唄うものはというと、自身の曲ではないことも多い。
いや、そうでないほうが多い。
大御所ならばいざしらず、私などぺえぺえでは、何でも唄わねばならない。
演歌系の歌は、どれもごっちゃになっちゃう、なんていってる余裕はない。
与えられたら覚えねばならない。
それも修行だ。
そうしていろんな歌と関ってきた。
好きなものも嫌いなものも、もちろんあるけど、そんなこと言ってられない。
どうも肌が合わないよ、と思っても親しくする。
親しくつきあううちに、だんだん良いところが見えてくる。
人も歌もおんなじだ。
今親しくしている最中なのが三曲。
梓みちよさんの「よろしかったら」
二葉あき子さんの「別れても」
都はるみさんの「小樽運河」
二葉さんの歌など、昭和21年のもの。
音源を聞くと、いろんな雑音が入って、それが効果音のよう。
なんともやるせない暗い歌だが、詞をみると藤浦洸さん。
子供の頃、テレビでよくみかけたコワイ顔のオジサンだ。
この藤浦さん、さすがの詞で、戦後の暗闇が見えてくる。
困ったのは音域。
この頃の歌は、低いところから突然高くなることが多い。
クラシック教育を受けた歌手だからこそ唄えたのだろう。
こりゃいくらなんでも飛びすぎでっせ、
思うままにメロディ作っちゃったでしょ的展開。
「夜のプラットホーム」しかり「赤い靴のタンゴ」しかり。
そしてこの「別れても」。
自由だったんだなあ、昔の作曲は。
なんてぶつぶついってる時間はないな。
来週と再来週と、本番までに、もっともっと親しくならねば。
かくして先人たちとの格闘は続くのでありました。