髪切ってくるというと


え どこ切るんですか


といわれるほど 短いが


それでも なかなか行けずじまいで


2ヶ月近くになり


やっと 美容院に行く



その帰りみち


友人たちと ご飯を食べる



しこたま蚊にさされた一人が


ごしごしと足をさすりながら


あるいは 顔にさされた一人は


マヌケだなあと いわれながら


顔を ぱんと叩く




お盆のせいか ホールも調理場も一人ずつの店


こんなとこで 地震きたら もう終わりだなあと


いいながら なかなか来ない料理を待ち


ワインを飲む




  ひどい時代だ



一人がつぶやく



   え やっぱり 今ってひどい時代ですか



若い一人が 聞く



   

   私なんか いい時代って知らない世代ですから

   生まれたときから 不景気で



そうだよな  彼女にくらべたら


まだ いい時代をしってる私たちなんか


申し訳ないようだなあ




とはいっても

 

   私なんかさ ちっともいい時代なかったよ

   バブルなんて 私と全然関係なかったもん


これが 私



どこからも お呼びはかからなかったし


お金ももちろん 入ってこなかったし





  ひどいよねえ 政治



一番年長の 一人がつぶやく





  もうさあ 日本てアメリカの48州にしてもらったほうが

  いいんじゃないかなあ

  自治区って形でさ



  そうだね そんでさ 名前もつけちゃってさ 



  私 ジェーン  

  私  アナスタシア

 

  え それって ロシア風じゃない

  そんなら 私  エリザベート


  私は 男みたいなのがいいから ハリー


  若草物語みたいでいいね 次女のジョーみたいだ



なんて 笑ってるうちに


たいして飲んでもいないのに


すっかりいい気持ちになって



ああ お腹いっぱいだといいながら 


駅で 別れる


(一番若い一人は きっと腹ぺこなんだろう)




ひどい時代だけど


こうして 笑えるってうれしい




  私さ もうほっぺた痛くなっちゃったよ

  一人でいると 笑うこともないからね



一緒に山の手線に乗る一人が


ごしごしと 顔をさする



  

ほら 口角が 少しあがったよ